第3回マスコミセミナー セミナーレポート

2009年1月28日

2008年12月10日、「第3回マスコミセミナー」が開催されました。ギャバ・ストレス研究センターでは、2006年より毎年マスコミの方々を対象に、当センターの活動要旨、ギャバ研究の最新知見発表、ストレスを取り巻く環境等についての情報を発信してまいりました。今回のセミナーでは、ギャバの効果を中心に5題の講演を行い、ギャバ研究成果を発信いたしました。本ニュースレターは当日の講演内容をまとめたものです。

01

【セミナー内容】
Ⅰ.『ギャバ摂取によるストレス軽減効果-禁煙ストレスに対する最新知見』
静岡県立大学 食品栄養科学部 教授 横越 英彦
Ⅱ.『ギャバの摂取は子どもの学習効率を改善する』
杏林大学 医学部精神神経科 主任教授 古賀 良彦
Ⅲ.『ギャバによる高齢者の睡眠改善効果について』
松下介護老人保健施設はーとぴあ 施設長 山根 哲郎
Ⅳ.『ギャバとヒアルロン酸の肌ストレス改善効果』
鈴木形成外科 院長  鈴木 晴恵
Ⅴ.『台湾でのGABA市場の広がりと将来展望』
TOONG YEUAN ENTERPRISE CO.,LTD PRESIDENT  LUISA Chang

02

03

Ⅰ.『ギャバ摂取によるストレス軽減効果-禁煙ストレスに対する最新知見
静岡県立大学 食品栄養科学部 教授 横越 英彦

禁煙時のストレスに対するGABAの効果を学術的に初めて解明した。現在、喫煙率は男性で52.8%、女性で13.4%で、喫煙人口は3,363万人と推計されている。喫煙の健康への影響が明らかにされる中、喫煙者の26.7%が「やめたい」と考えており、「本数を減らしたい」と考える者を含めた禁煙希望者の割合は64.2%である。禁煙を進める中、食品成分であるGABAにその効果の一旦を担う可能性がでてきた。
そこで、喫煙者11名(平均年齢31.8歳)を被験者とし、禁煙期間中、ストレスを感じた時に、デキストリンカプセル(100mg/個/回)または、GABAカプセル(100mg/個/回)を摂取することで効果を調べた。

1.禁煙中の心理状態が安定
POMS(Profile of Mood States)によるアンケート調査の結果、GABA群では各試験項目の精神状態が安定していた(図1)。また、禁煙最終日の15時から18時に行ったVAS調査により「タバコを吸いたい気持ち」がGABA群で有意に抑えられていた。
01(図1)POMS調査結果

2.禁煙中のストレスを減少
唾液中のストレスマーカーであるコルチゾールを測定した結果、GABA群で減少傾向が認められた(図2)。
GABAが禁煙をサポートすることが期待される。
02(図2)唾液中のコンチゾール濃度

Ⅱ.『ギャバの摂取は子どもの学習効率を改善する』
杏林大学 医学部精神神経科 主任教授 古賀 良彦

ストレスには様々な要因が考えられますが、大人及び子供がストレスを受ける場面は異なっている。大人がストレスを感じる場面として通勤(満員電車)、会議、人間関係など主に仕事に関わる事柄が挙げられる。また、子供がストレスを感じる場面として最も挙げられるのは学習(受験)である。現代の子供たちの学習時間は年々増加傾向にあり、過度のストレスにさらされた状態であると考えられ、キレる、集中力にかける等、いわゆる多動性症候群という問題が生じている。この現象は社会的に大きな問題であり、また、このような状態で更に学習を続けても、集中力が続かないため、学習効率の低下が予想される。
これまでγ-アミノ酪酸(GABA)によるストレス軽減効果やリラックス効果などは、主に成人を対象とした試験から確認されているが、子供に対する効果についての調査報告はほとんどない。
そこで、東京都内の小学校に通う平均年齢11.6±0.5歳の健常な児童56名(男児24名・女児32名)を被験者として調査を行った。試験は、GABAを100mg含有するミルクチョコレートを摂取するGABA群(男児13名・女児15名)と、GABAを含まないミルクチョコレートを摂取するプラセボ群(男児11名・女児17名)の2群に分け、簡単な暗算(内田クレペリンテスト)試験を行い、試験前後の唾液を採取し、ストレスの指標として唾液中クロモグラニンA(CgA)について評価を行った。

1.ギャバによる試験中ストレスの軽減
試験前後の唾液を採取し、ストレスの指標として唾液中CgAについて評価を行いました。その結果、GABA摂取群ではクレペリンテスト後の唾液中CgAの減少が確認された(図3)。

03
(図3)CgA変化率
(2008年日本栄養・食糧学会 小長井ら調べ)

2.回答率・正答率の増加
クレペリンテストの回答数及び正解数を解析した結果、GABAを摂取した児童では、プラセボ群と比較してクレペリン回答数及び正答数の増加傾向が認められた(図4)。

04
(図4)クレペリンテスト成績
(2008年日本栄養・食糧学会 小長井ら調べ)

3.作業効率も持続
GABAを摂取することで、作業効率が持続することが確認できた(図5)。これらの結果から、GABAを摂取することで、児童らが学習時に受けているストレスを軽減し、また集中力が持続する事で学習効率(作業効率)もアップし、学習能力の向上が期待できる。

05
(図5)GABA摂取時の作業効率の持続

Ⅲ.『ギャバによる高齢者の睡眠改善効果について』
松下介護老人保健施設はーとぴあ 施設長 山根 哲郎

近年、高齢者人口が増え、益々高齢者の健康維持は今後の大きな課題となっている。中でも睡眠衛生に関する疫学調査の結果から、各世代別で不眠を訴えている割合を調査した結果、60才以上では約30%の人が不眠を訴えており、高齢者の悩みのひとつとしてあげられる。また高齢者においては不眠が体調不良や精神不安定の引き金になりやすく、その結果、睡眠薬に頼る傾向が見られる。しかし薬に頼る生活ではなく、日常の食生活の中で不眠を改善することができれば、安心・安全な日常生活を過ごすことができる。
そこで、食品成分であるGABAの抗ストレス効果に着目し、睡眠の質改善ならびに頻尿に対する効果を確認した。調査は、48名(平均年齢81.4歳)を対象に、プラセボ(GABAを含まない)チョコレート摂取群(n=19名、平均年齢81.5±10.4才)、GABA100mg含有するチョコレート摂取群(n=19名、平均年齢81.3±8.8才)の2群に分けて実施した。

1.入眠と睡眠維持に効果
睡眠アンケートの結果、GABA群において起床時の眠気は11人中6名が改善、入眠と睡眠維持は11人中5名が改善(図6)、疲労回復は、11人中7人が改善され、いずれもプラセボ群と比較し改善効果が認められた

06
(図6)眠気に関するアンケート

2.睡眠後の尿回数が減少
頻尿の人対象に就寝後の尿回数の変化を調べたところ、GABA群は15%程、回数が減少した(図7)。以上の結果より、GABA含有食品は高齢者の睡眠の質を改善し、頻尿改善に役立つ可能性が示唆された。

07
(図7)就寝後の尿回数

Ⅳ.『ギャバとヒアルロン酸の肌ストレス改善効果』
鈴木形成外科 院長  鈴木 晴恵

“肌ストレス”とは、一般的に肌が乾燥状態にさらされている状態の事をいう。肌が乾燥している原因の意識調査を行った結果、一番は加齢に伴うものであったが、加齢に続きストレス、寝不足が原因で肌が乾燥していると感じている人が多い。これまで肌の保湿といえば、ヒアルロン酸を含む製品が多くあり、事実ヒアルロン酸の保湿効果の検証も多くされている。但し、近年、肌トラブルも複雑化してきており、加齢によるものだけではなく、内面から荒れるケースも多くなってきている。GABAは、内面のストレスを緩和し、睡眠の質を改善する効果があることが報告されている。
そこで、GABAとヒアルロン酸を同時に摂取した時の効果について検証した。第一回目の試験では、女性18名(平均年齢30.9歳)を被験者として実施した。試験項目としては、血液検査、睡眠及び肌に関するアンケート調査、肌画像測定を実施した。また第二回目の試験としては、女性18名(平均年齢34.9歳)を被験者として、肌状態測定(水分量、弾力性)、睡眠及び肌に関するアンケートを実施した。検体としては、GABAカプセル(3粒/日)摂取の群、ヒアルロン酸カプセル(3粒/日)摂取の群の2群に分けた。3週間摂取した後、各群ともにGABAとヒアルロン酸を同時に摂取し、更に3週間後に検査を行った。

1.睡眠の質の改善により内面物質が変化
GABAとヒアルロン酸を同時に摂取することにより睡眠の質が改善され、成長ホルモン依存的に生産されるソマトメジンC(図8)並びにDHEAs(コラーゲンの増加に関与)の相乗的な増加を確認した。

08
(図8)摂取試験 血液検査結果

2.肌ストレスに顕著な効果
肌状態のうち頬の水分量並びに弾力性に関して、GABAとヒアルロン酸の相乗的な効果が得られた(図9)。また、肌画像解析を行うと、肌の皮溝と皮丘が単独摂取より改善されており、画像解析の結果からも乾燥が改善されている事が検証された。以上の結果、GABAとヒアルロン酸を同時に摂取することで、それぞれが持つ効果を相乗的に補い、肌ストレスに対して顕著な改善効果を示すことが確認された。

09
(図9)摂取試験 肌状態結果

このほかTOONG YEUAN ENTERPRISE CO.,LTD PRESIDENT  LUISA Changによる『台湾でのGABA市場の広がりと将来展望』の講演があり、セミナーは盛況のうちに閉会しました。

10