第2回マスコミセミナー セミナーレポート

2007年7月6日

「GABA(ギャバ)による、ストレス軽減作用とパフォーマンスへの影響」
~ビジネスシーンに生かす、トップアスリートのメンタルマネジメント術~

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【セミナー内容】

■第1部 最新研究報告
『ギャバ摂取によるストレス軽減とパフォーマンスへの影響』
静岡県立大学教授 横越英彦

■第2部トークショー
『ビジネスシーンに生かす、トップアスリートのメンタルマネジメント術』
ゲスト:
神戸製鋼コベルコスティーラーズ ゼネラルマネージャー兼総監督 平尾誠二
サイバーエージェント代表取締役社長 藤田晋
日本心理学会認定心理士、メンタルトレーナー 高畑好秀
§VTR出演:プロゴルファー 深堀圭一郎

GABA(ギャバ)・ストレス研究センターは、現代人のストレス軽減に寄与することを目的として、2006年11月に設立されました。中でも、もともと私たちの体に存在し、食品にも広く含まれるギャバのストレス軽減作用に着目し、その効果検証や、さまざまな形での情報発信を行っています。
当センターでは去る6月19日、マスコミセミナーを開催いたしました。2回目となる今回は、第1部で静岡県立大学教授の横越英彦先生より、ギャバに関する最新の研究成果をご報告いただいた後、第2部では、神戸製鋼コベルコスティーラーズ(ラグビー部)ゼネラルマネージャーで総監督でもある平尾誠二氏、(株)サイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏、メンタルトレーナーの高畑好秀氏をゲストにお迎えし、「ビジネスシーンに生かす、トップアスリートのメンタルマネジメント術」をテーマにトークショーを行いました。
本ニュースレターは、第1部での横越英彦先生による御講演、及び、第2部でのトークショーを中心に、当日のセミナー内容をまとめたものです。2nd

■第1部最新研究報告
『ギャバ摂取によるストレス軽減とパフォーマンスへの影響』
静岡県立大学教授 横越英彦 yokogoshi

1.ギャバ、及び、ギャバの機能性
注目されるギャバのストレス軽減作用
超高齢社会を目前にして、今、私たちの多くが願っているのは「健康で長生きしたい」ということである。そのために、日々降りかかるストレスから身を守り、それが引き金となる病気をいかに予防するかは、ひとつの重要なテーマだろう。
ギャバ(Gamma AminoButyric Acid:GABA、日本語名は「γ(ガンマ)-アミノ酪酸」)は、私たちの体の中をはじめ、動植物に広く存在する天然のアミノ酸である。食品では発芽玄米のほか、野菜や果物、キムチなどの発酵食品に豊富に含まれる。(図1)

1)ギャバは極度のストレスが心身に及ぼす影響を緩和する
ギャバの生理機能については、これまでさまざまな研究が行われているが、ここで注目しているのは、その神経安定作用やストレス軽減作用である。第1回マスコミセミナーでも紹介したが、例えば高所恐怖症の人につり橋を渡ってもらう実験では、ギャバを摂取することで、ストレス反応が軽減された。(図2)

2)ギャバは自律神経系を副交感神経優位(リラックス状態)にする
また脳波や瞳孔の開き具合、心拍数を見た実験でも、ギャバを摂ると体はリラックスする方向に作用することが確認されている。(図3)
01(図1)GABA(ギャバ)について
02jpg(図2)ギャバが極度のストレス状況に及ぼす影響 / クロモグラニンA量の変化
(2003年日本農芸化学会横越ら調べ)
03(図3)ギャバによる自律神経への影響
(2002年、2003年日本農芸化学会横越ら調べ)

2.最新研究報告
ギャバ摂取によるストレス軽減とパフォーマンスへの影響

慢性疲労に対するギャバの効果を検証(背景とプロトコル)
今回、新たな切り口として、現代人が抱える「疲労」という問題に着目し、ギャバの効果を調べる実験を行った。1999年に厚生労働省・疲労研究班が行った調査によると、8,000万人のビジネスパーソンのうち、59%が「疲れている」と回答。その状態が半年以上継続しているという人も、全体の37%に上ることが分かった(図4)。
また、疲労を感じている人たちに、日常生活への影響を尋ねたところ、「能力の低下」が39%、「時にやすむ」が6.0%、「休職、退職」が1.7%と、単なる疲れと看過できない状況が浮き彫りになっている。
実験ではまず、24歳〜43歳の健康な成人男女(男性16名、女性14名、平均年齢31.7歳)に、疲労感を調べる3種類のアンケート調査(「POMS」「疲労アンケート」「VAS」)を実施し(週1回、4週間)、継続して疲労を感じている人9名(男性4名、女性5名、平均年齢28.9歳)を選び出した。
次にこの9名に計算問題(「内田クレペリンテスト」)を行ってもらい、ギャバの摂取が、計算による疲労感やストレス、作業効率などにどのような影響を与えるか調べた。
疲労感の評価には、前述のアンケート調査のうち「VAS」と「POMS」の2種類を用い、ストレスを測る指標として、ヒトがストレス状態にあるとき、唾液中に多く分泌される成分であるクロモグラニンAとコルチゾールの量を、試験前、試験の中間時点、試験終了時の計3回、唾液を採取し、それぞれ測定した。

疲労感、ストレスを緩和。作業効率も向上
1)疲労感を軽減する
「VAS (主観・実感評価) 」では、試験の前半(左)と後半(中央)、及び試験全体(右)のいずれにおいても、ギャバ非摂取グループ、ギャバ25mg摂取グループと比較して、ギャバを50mg摂取したグループでは、疲労感が有意に低かった。(図5)
一方、「POMS (心理テスト) 」では、「混乱」「活気」「怒り」「抑うつ」「緊張不安」の項目では特に大きな差はなかったものの、「疲労」の項目でギャバを50mg摂取したグループに有意な低下が認められた。(図6)
図5、6の結果からギャバは疲労感の緩和に効果があることが確認された。
04(図4)わが国の疲労の統計
05(図5)GABAによる疲労感軽減効果-1(VAS)
(2007年日本農芸化学会横越ら調べ)
06(図6)GABAによる疲労感軽減効果-2(POMS)
(2007年日本農芸化学会横越ら調べ)

2)ストレスを軽減する
また、生化学的なストレスの指標である、唾液中のクロモグラニンAとコルチゾールについては、図7の左のグラフのように、ギャバを摂取したグループでは、試験前と試験の中間時点、及び試験終了時で、クロモグラニンA量が有意に抑えられた。右のグラフのコルチゾールも同様で、ギャバを摂取していないグループと比較して、ギャバ摂取の2グループは唾液中のコルチゾール量が少なく、特に50mgを摂取したグループではその差が顕著だった。(図7)

3)作業効率(パフォーマンス)を向上する
最後に図8は、被験者が行った計算問題のうち、正解の総数を示したものだが、ギャバを50mg摂取したグループは、他と比べて正解の数が有意に多かった。(図8)
以上これらの結果から、疲労を自覚している人を対象とした実験において、ギャバは疲労感の改善、及びストレス緩和をもたらし、作業効率を向上させる効果があることが認められた。
3.ギャバを取り巻く環境
広がるギャバ配合食品。今後はアメリカでも
2007年5月、ギャバは米国のFDA(食品医薬品局)のGRAS(Generally Recognized As Safe:一般に安全と認められる食品)を取得した。GRASとはFDAが食品素材に対して設けている認可制度で、これによりギャバの安全性が米国で公に認められる第一歩になったことになる。
現在、日本市場ではチョコレートやドリンク類などをはじめ、さまざまなギャバ配合の商品が出回っているが、今後は日本同様、アメリカ市場においても、ギャバの食品への応用が進むことが予想されている。(図9)
07(図7)GABAによるストレス軽減効果(CgA、コルチゾール)
(2007年日本農芸化学会横越ら調べ)
08(図8)GABA摂取による作業量向上効果
(2007年日本農芸化学会横越ら調べ)
09(図9)GABA含有食品の広がり

 

第2部トークショー
『ビジネスシーンに生かす、トップアスリートのメンタルマネジメント術』
平尾誠二、藤田晋、高畑好秀、深堀敬一郎(VTR出演)0-010-020-03 0-04

精神面の強さとパフォーマンスの関係について、どのように考えていますか?

平尾氏
過度な緊張はパフォーマンスの質を下げます。「失敗してはいけない」と必要以上に思っていると、「チャンスがあるのに攻めない」「ふだんできていることができない」という状況に陥ります。だからいつも通りやる方が得。120%の力を出そうと思わないことです。80~90%で十分。それでも勝てるだけの練習をすればいい。私自身はこのことに大学時代に気がついて、それ以来あまりプレッシャーに苦しむことがなくなりました。

藤田氏
あがり性で大勢の前に立つとか、重要なプレゼンの場などは苦手です。でも社長業も10年になるので、日常の業務でのメンタル面の強さには自信がつきました。会社で働くうえではメンタルタフネスがないと話になりません。

高畑氏
例えばここに30cm幅の板があるとして、その上を歩くことはだれにでもできます。でも同じ板をビルの屋上の端に置いたらどうでしょう。「歩く」という単純なことでも、不安や恐怖を感じると、とたんにできなくなる。ですからスポーツやビジネスなどのように、複雑な状況の中で、複雑な技術を使う場合には、メンタルマネジメントは非常に重要になってきます。
これまでの経験で「あのときは非常にプレッシャーがかかった」という場面は?

平尾氏
大学のころからは精神的に切り替われたので、高校の全国大会ぐらいが、いちばん緊張感が強かったと思います。そのときは試合中も“地に足が着かない感じ”でした。

藤田氏
決算発表のときはやはりプレッシャーがかかります。
それから会社を上場したとき。直前になって上場が延期になるような事件が次々と起きて…そのときは投げ出したくなったり、キレてしまいそうになりました。でもあれでキレるようだと経営者としては失格。そういう経験を経て、精神的に強くなりました。
「あのときはすごく集中できて、うまくいった」という経験についてはどうでしょうか?

平尾氏
気がついたらトライしていた、ということはあります。ラグビーは次にどういうプレーをするか、選手自身が瞬時に判断しなければなりません。でもその瞬間にあれこれ考えていてはだめ。体に任せないと質の高い判断はできません。ですからふだんの練習で考え過ぎるほど考えて、体に覚え込ませておく。試合のときは体に任せて反応できるまでに考え抜いて、頭を空っぽにしてのぞむことにしています。

高畑氏
僕たちはそれを「手動化された動き」と「自動化された動き」と考えます。手動化はひとつひとつ考えながらマニュアルで動かしていく。自動化は覚えたことをただアウトプットするだけなのですが、例えば、プロ野球の選手でも、キャッチボールができなくなることがある。「イップス(Yips:プレッシャーのため極度に緊張し、ふだんは何も考えずにできていることが、急にできなくなってしまうこと)」という状態なのですが、そのイップスを改善するポイントは、選手の頭の中にあるイメージを、いいイメージに変えていくこと。よく「ひじが上がっていない」とか、フォームから直そうとするコーチがいますが、かえって動きがぎこちなくなります。プロなのでキャッチボールができないはずはない。要は当たり前にできていたことを、当たり前にできる状態にメンタル面を整えることが大事なんです。
藤田さんは非常に集中力があるそうですが、それは日ごろのビジネスにも生かされていますか?

藤田氏
特に調子がいい時、いい波が来たと感じる時は、確かに100%仕事に集中できている感覚があり、そのときは一気に成果が上がります。でも通常の仕事は延々と続くのが会社生活というものですから、最終的には集中力よりむしろ忍耐力が重要。
目の前の矛盾や理不尽さなど納得のいかないことに、いちいち切れていたらそこでゲームオーバーなので、耐え切った人が最後に勝つという要素が強いですね。なので、本当にストレスは溜まります。

高畑氏
スポーツと違いビジネスには終わりがない。つっこんでいけばどんどん深みにはまる世界だと思いますが、そんな中、常に頭の中をクリアにしておいて、混沌した状態においても的確に自分がどこにいるのかを感じ、自分のイメージの中でしっかり掴んでシャープに対応していくのが大切だと思います。01020304

具体的にみなさんが実践している、またはおすすめのメンタルマネジメント術があれば、教えてください。

平尾氏
自分が好きなことでないと、いいパフォーマンスはできない。もしやらなければならないことがあるなら、僕はそれを「好きになる」か、「好きになるように作り変える」ことをします。
やりがいを感じるように自分のモチベーションをあげていく。

藤田氏
僕自身、ちょうど今それに悩んでいるところです(笑)。今まで「ストレスはたまらない」と言っていたのですが、ストレスが何かを知らなかっただけでした。
普段から平常心を保つように心がけていて、仕事をしていてもめったに怒らず、2ちゃんねるやブログに悪口を書かれていても全然平気…な訳はなく、いちいちムカッとくるのですが、今まではそれを自分の中で押さえ込んでいたんですね。最近では夜、お酒を浴びるように飲んで、体調がどんどん悪くなる…。
自分でもなんでこんなに飲んでしまうのかと考えてみたら、ストレスが原因だと思い当たりました。お酒以外に何か良いストレス発散法があれば、逆に教えて欲しいと思っています。

VTR出演「私のメンタルマネジメントとプレッシャーへの対処法」
プロゴルファー深堀圭一郎氏

深堀氏
ゴルフは冷静な判断が求められるスポーツ。プレッシャーで頭がぼーっとしてくると、10の判断が必要な場面で、1つか2つしかできなくなります。そういうときは大きく深呼吸をして水分を摂り、頭で何をすればいいか考えてから、プレーに入るようにしています。
プレッシャー対策にはギャバも活用しています。ある時、頭がぼんやりしてプレーに悪影響を与えかねない状況になってしまったのですが、ギャバを摂ったところ、しばらくして頭がすっきり冴えてきたのを体感しました。それ以来、プレッシャー対策にギャバは欠かせなくなりました。

高畑氏
メンタル面は自分自身で鍛えていかなければならないものですが、補助的な役割を担うものとして、ストレス軽減作用のあるギャバなどを取り入れるのもひとつの方法だと思います。01020304

最後にビジネスパーソンのメンタルマネジメントについて、ひと言アドバイスを

平尾氏
120%とかではなく、ふだん通りの力を出すことを考えてほしい。
それができなかったときに、悔いが残りますから。それから「真剣」になっても、「深刻」になりすぎないこと。深刻になればなるほど、自分の力が出し切れないことが多いです。

藤田氏
技術力や営業力などと同様、ビジネスパーソンにとってメンタルタフネスは非常に重要なスキル。経験によって磨かれていくものなので、意識して磨いていってほしいと思います。

高畑氏
僕はよく「99%の準備と1%の命運」と言います。スポーツでもビジネスでも、しょせん最後には「運」も大きく関係してくるが、先のことをあれこれ考えても結局分からないし、そこに意識を割けば割くほど、不安が大きくなる。だから「運」を意識するのを極力抑えて、目の前にある99%の準備をしっかりやっていく。そうすれば目先ではうまくいったり、いかなかったりしても、長いスパンで見れば何かしらの結果がついてきます。そういう準備の中にギャバのようなものを取り入れるのも、いいのではないかと思います。

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