ギャバのストレスによる脳細胞の破壊を防御する効果

脳の細胞は、酸化ストレスによって少しずつ破壊されることがあり、そのために健忘症を引き起こすこともあります。ラットに薬剤を与えて脳細胞の破壊を再現し、そこにギャバの摂取がどのように作用するかを実験・観察しました。

A. 自発的交替行動の測定

方法

まず、雄マウス(4週齢)を、ギャバを含む餌(0.4%)を与えるグループと、ギャバを含まない餌を与えるグループ(コントロールI)に分けて5週間飼育しました。その後に、ギャバを含む餌で飼育されたグループと、コントロールIの一部のマウス(コントロールII)に薬剤(Scopolamine)を与え、健忘症を誘発させて、「自発的交替行動試験(Y-maze test)」(*1)と「受動的回避学習試験」(*2)を実施しました。

*1 自発的交替行動の測定(Y-maze test):Yの形をした迷路(下左写真)を使うテストです。まず、3つあるアームのうちの1つの先端にマウス置き、8分間にわたって迷路内を自由に探索させて、マウスが移動したアームを順番通りに記録します。次に、各アームへの移動回数(総アーム選択数「total arm entries」)と、連続して異なる3本のアームを選択した数(交替行動数)を数えます。交替行動数÷(総アーム選択数-2)×100=交替行動率(alternation behavior (%))とし、これを自発的交替行動の指標とします。
*2 受動的回避学習試験:電気ショックの回避を確認する実験など、自ら進んでするのではなく受身の学習行動を観察するもの。

結果

自発的交替行動試験(Y-maze test)で、正常なマウスはa → b → c という行動(Alternation Behavior)を示す確率が高いのですが、健忘症になったマウスはaからスタートしてaに戻るという行動に出やすくなります。

page05_fig_01コントロールII(ギャバの投与はなく、薬剤(Scopolamine)で健忘症を誘発されているグループ)が、コントロールI(ギャバもScopolamineも投与されていないグループ)と比べて、Alternation Behaviorの確率が低くなっています(上グラフ)。

しかし、ギャバ入りの餌を食べていたグループは、コントロールIIと同じようにScopolamineで健忘症を誘発されていても、Alternation Behaviorの確率はコントロールIと同レベルでした。

つまり、ギャバの摂取はScopolamineから脳細胞を防御したと考えられます。

page05_fig_02

B. 受動的回避学習試験

方法

実験A.の3つのマウスグループを、明るい部屋と暗い部屋をつなげたところに放し、暗い部屋に移動すると電気ショックがかかるようにしました。マウスは暗いところを好みますが、この電気ショックを繰り返すことでストレスの回避を学習するので、明るい部屋にとどまる時間が通常は長くなります。

結果

コントロールI(ギャバの投与なし、Scopolamineの投与なし)と比べて、コントロールII(ギャバは投与されず、Scopolamineで健忘症を誘発されたマウス)は、電気ショックのことをすぐに忘れるので、明るい部屋に長い間留まることなく、暗い部屋に移りました。

page05_fig_03

一方、あらかじめギャバ入りの餌で飼育されていたマウスは、Scopolamineで健忘症を誘発されても、明るい部屋に留まる時間はコントロールIと同じレベルを維持しました。

つまり、ギャバはScopolamineから脳細胞を防御したと考えられます。